さくらの記憶
さくらは、祖母の言葉の意味を考える。

(やっぱりおばあちゃんも、この土地に何かを感じているのかな?)

「それにここは、神代さんが守ってくれてる土地だしね」

ゴトッとさくらは湯呑みを倒してしまった。

「わー、ごめんごめん!」

慌ててちゃぶ台にこぼれたお茶を拭く。

(びっくりしたー。おばあちゃん、今、神代さんって言った??)

「え、なに?誰が守ってくれてるって?」

サラッと聞き直してみる。

「ここら一帯はね、昔から神代さんっていう大地主さんの土地なんだよ。どんなに時代が変わってもこの自然が守られているのは、神代さんのおかげ。でなければ、お金に目がくらんだ人達が、どんどん都市開発を進めてしまう。実際、色んな話が持ちかけられても、神代さんは一切断ってるそうだよ」

まあでも、コンビニくらいは、もうちょっと増やして欲しいけど、と祖母は笑う。

(そうなんだ…。おじいさんと北斗さん、この土地を守ろうとしてるのね)

なんだか、知らなかった北斗の一面を見られたようで、さくらは嬉しくなった。

夕方になり、さくらは、そろそろ行かないと、と立ち上がる。

「じゃあ、おばあちゃん。くれぐれも足お大事にね。私もこれからは、時々顔を出すようにするから」
「ありがとうね、さくら。気をつけて帰りなさいね」

さくらは、今度こそ間違えずに駅へのバスに乗り、東京へ向かった。
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