さくらの記憶
第十五章 東京での日々
ゴールデンウィークが明け、今日からまた仕事が始まる。

さくらは、駅の改札を出て太陽を浴びた途端、後悔した。

(あ、暑い…。服のチョイス間違えた。東京はもはや初夏なのね)

会社へは駅から徒歩5分の距離だが、すでに汗ばんできて、堪らずさくらはジャケットを脱ぐ。

すると後ろから、ポンと肩を叩かれた。

「さーくら!おっはようー」

目の前に、ハイビスカス柄のワンピースを着た遥が現れる。

「うわっ、常夏!」
「うふふー、気分は未だにハワイよー」
「そ、そっか。私とは季節も国も違うところにいたのね」
「楽しかったー、ハワイ。あとでお土産渡すね!」
「あ、ありがとう。私もお土産渡すけど、先に言っておくわ。お饅頭だからね」
「あらー、嬉しいわ。全然そういうの食べてなかったから」
「そ、そりゃそうよね。あはは」

思わず乾いた笑いが漏れる。

「あーあ、また今日から仕事かー」

更衣室で着替えながら、遥がため息をつく。

「ほんとだねー。でもほら、頑張ってお金貯めて、またパーッと旅行楽しめばいいじゃない?」
「そうだね!今度はどこに行こうかなー。ねえ、次はさくらも一緒に行かない?海外旅行」

ええー?と、さくらは少し顔をしかめる。

「私は海外とか、あんまり興味ないなー」
「うそ、じゃあまた田舎に行く気?」
「うん。多分ね」
「やだもうー、お年寄りの温泉旅行じゃないんだから。若いうちは、海外行っとかないと!ね?」

次は絶対にさくらも連れて行く!と、なぜだか遥は妙に気合いを入れていた。
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