悪役令嬢は全力でグータラしたいのに、隣国皇太子が溺愛してくる。なぜ。
 確かにこの国の王太子とふたりきりの時に命令でもされたら、いくら侯爵令嬢といえども断るのは難しい。王族であることを盾にして圧力をかけると脅せば、なにもかもあきらめて家のために自分を差し出すのが貴族令嬢だ。あの男はどこまでもクズだ。

「それでは私が新しいお相手をご紹介いたします。誠実で、しっかりとレイチェル様のお話を聞いてくださる殿方を探してまいりますわ!」
「……わたくしのような傷物をもらってくださる方がいらっしゃるなら、どなたでもありがたいことですわ」
「お任せください。責任もってご紹介いたします。レイチェル様が気に入られるお方に出会えるまで、探し続けますわ。それと——」

 私はピンク色の包装紙でかわいらしくラッピングされた包みを、ポケットから取り出した。これは前世では節約のために手作りしていた化粧水だ。この世界の化粧水はあまり効果的ではないので、お詫びに特別配合のものを用意した。これでさらに美しくなって、気に入った殿方をゲットしてもらいたい。

「こちら私のお手製の化粧水ですが、そこそこ効果が実感できると思いますの。レイチェル様は十分お美しいですが、これでお肌を整えて、さらに素敵なお方をつかまえてください」
「まあ! ユーリエス様のお手製でございますか? 少し試してみても?」
「ええ、もちろんです。成分が合わなければ別のものをご用意しますので」

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