悪役令嬢は全力でグータラしたいのに、隣国皇太子が溺愛してくる。なぜ。
 とにかくヨシュア様が大好きすぎて、わずかな情報を手にしてはニマニマと眺めていた。それが本物のヨシュア様が目の前で話して動いて微笑んでいたと気付いた時は、勢い余って知恵熱が出た。まあ、それは置いておいて。

 いつも穏やかに微笑んで紳士的な態度の上、気の利くヨシュア様はこの世界で大変人気がある。それなのにずっと婚約者すらおかずに、お兄様の補佐として陰ながら献身的に尽くしてくれているのだ。

 お兄ちゃんがお姉ちゃんのためにフランセル公爵家に行っていた間、ヨシュア様も当然補佐としてバスティア王国へ出向していたので、干からびてしまいそうだった。

 ごく稀にお兄様の使いだと言ってやってきた時に、これでもかとヨシュア様の成分を取り込んでなんとか凌いでいたのが懐かしい。

 その後、聖女に皇城を占拠され、お姉ちゃんが指名手配になりバスティア王国へ行き、私は情報を集めるために影も使いながら前世の知識をフル活用していた。

 そんな時、隠れ家にヨシュア様がやってきた。お兄様に命じられて私の補佐をすることになったらしい。
 珍しくお兄様がいい仕事をしてくれた。これはわたしも張り切らねばなるまい。

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