悪役令嬢は全力でグータラしたいのに、隣国皇太子が溺愛してくる。なぜ。
 そうなのだ、ふたりきりになった瞬間から穏やかな春の陽だまりみたいなヨシュア様は影を潜めて、獰猛な野生の肉食動物がこんにちはと顔を出している。

「それに先ほど『休憩しよう』とお誘いしたら、『はい』と答えられましたよね?」
「そ、そうですが、それがなにか…… ?」

 なんだろう、あの受け答えでなにか失敗したのだろうか? たったあれだけの会話で?

「それはつまり、私とベッドで休もうという誘いに頷いたということです」

 そんな隠語知りませんでしたー!! てゆか、なんなのその宿泊ですか、休憩ですかみたいな隠語は!?
 妖艶な微笑みを浮かべたヨシュア様はそのままわたしをベッドへ押し倒す。わたしの両手をベッドに縫いつけて、決して逃さないとギュッと握ってくる。

 うっとりとわたしを見つめるヨシュア様は、天界におわす神々の如く崇高でなにものにも代え難い。ヤバい、昇天しそうだ。

「あ、ああああ、あの、あの」
「ミカエラ、愛してます」
「はうっ!!」

 もうダメだ、トドメを刺された。今一瞬天国が見えた。

「貴女のすべてが欲しい」
「〜〜〜〜っ!!」

 最推しであるヨシュア様にそこまで言われて、わたしに断るという選択肢はなかった。



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