悪役令嬢は全力でグータラしたいのに、隣国皇太子が溺愛してくる。なぜ。
 にっこりと微笑んで侍女の戻りを待つ。このタイミングではまだ逃げ出さない。ここで逃げ出したら侍女に迷惑がかかってしまう。近場で用達したのか、五分ほどで戻ってきた侍女はレターセットとペンを持っていた。

「内容を見られたら恥ずかしいから、少し離れていてくれる?」
「かしこまりました」

 ほっこりした笑みを浮かべて、侍女は距離を取る。私は家に帰ることと、周りを騙したのは私だから決して処罰するなと手紙を書き封を閉じた。
 申し訳ない気持ちをそっと込めて、笑顔を向ける侍女に手紙を届けるように頼んだ。

 侍女の足音が遠のき、また静けさが戻る。
 次はこの護衛騎士たちだ。どうやってここから抜け出そうか。私はあることを思いついたので、ゆっくりと出口に向かう。中庭から出ようとしたところで、やはり騎士に声をかけられた。

「ユーリエス様、どちらへ行かれますか?」
「お花を摘みに」
「え? 花は中庭に……」
「おい、それ以上は言うな」
「……あっ、失礼いたしました」

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