推しがいるのはナイショです!
「おはようございまあす、五十嵐課長ぉ」
 いつのまにか、高塚さんも近くに来ていた。
「おはよう。水無瀬さん、早速だけどちょっといいかな」
 課長の返答が不満だったらしく、高塚さんはちょっと機嫌の悪い顔でそこに立ったままだ。留美がその後ろできししと笑うのが見えた。

「はい、なんでしょう」
 課長は、自分の持っていたノートパッドを示した。どうやら、ここに来る前に部長との打ち合わせをしていたらしい。
「この資料作ったの水無瀬さんだよね。このデータの元の書類どこにあるかわかる? 細かい数字が知りたいんだ」
「ああ、これでしたら……」

 営業や窓口の仕事はとっくにデジタル化してるけど、総務の事務仕事はまだまだアナログが多い。
 書庫にある過去データの場所を告げると、課長は笑顔でうなずいた。

「そうか。高塚さん」
「はあい!」
 ずっと隣にいた高塚さんがここぞとばかりに笑顔で返事をする。

「資料室から、この資料を持ってきてくれ」
 一瞬だけ嫌そうな顔をした高塚さんは、次には本当に申し訳なさそうに上目遣いで課長を見上げた。
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