転生した双子アイドルは伯爵令嬢に恋をする ~一途な恋の音色~

領地から王都のクスフォード家に戻り、夏期休暇も残りわずか。
今年は実に思い出深い夏になった。
なんといってもクレアと恋人同士になれたしね。
王都に戻ってからも僕とクレアはふたりで出掛けた。
僕達のデートを見た人達によって、僕とあのご令嬢の婚約の噂や、クレアと澪音の婚約の噂は消えていったようだ。


「こ、このたびはお騒がせして申し訳ございませんでした」

その噂になったオーロラ・フロックス様。
薄いピンクのストレートの髪に緑色の瞳の少し人見知りなご令嬢だ。
クレアとフロックス様が挨拶をしている。


そんなフロックス様の趣味は……。

「な、なんて美しい緑色なのでしょう!」

「本当に。このリョクチャの渋味と甘味のバランス!そして香り!素晴らしいですね」

お茶好きのふたりの話は盛り上がっている。
でもフロックス様はキラリと眼鏡が光る一緒にお茶の話をしている人にも夢中だ。


「そういうことかぁ」

「なぁんだ」

ヘンリー様と真璃愛はそんなふたりを見て納得している。

今日は王都のクスフォード家で皆で集まっている。
この夏の予定が合わなかったジェイク様も呼んでいて、『皆で好きなお茶を持ち寄る』と声を掛けると喜んで参加してくれた。

例のご令嬢、フロックス様は執事喫茶のイベントの日にジェイク様に恋をしたそうだ。
フロックス様も自分で茶葉を集めたり調べたりすることが好きで、あの日ジェイク様が自分に対してどんな紅茶が好みなのかをメニューの中から真剣に選んでくれる姿や、紅茶の知識と溢れる紅茶愛、そして笑顔に惹かれたようだ。

学園でジェイク様に声を掛けようとしても、普段のジェイク様はクールそのもの。笑顔になることが少ない。
むしろ執事喫茶の時がレア。
そして、フロックス様の人見知りな性格もあり、声が掛けられなかったそうだ。

僕と話をしているジェイク様は笑顔の時が多いようで、仲の良さそうな僕に相談をしたという訳だ。
でも人見知りな性格が災いして、やっと僕に相談をしたのも夏期休暇に入る直前。
ジェイク様はこの夏は予定があると言っていたから、ふたりを会わせることができず、そのあいだに僕とフロックス様の噂が広まってしまった。



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