転生した双子アイドルは伯爵令嬢に恋をする ~一途な恋の音色~
「汽車の旅ができるとは!テンション上がるぜー!ルカ、ありがとな」

「本当に!うちの商品の輸送も早くなったから助かっているよ」

「僕もこの国の王都から隣国まで向かう日数が少なくなって嬉しいよ」

「ええ!もう、皆もやめてよ!僕が造ったわけでもないのに。それにあの日のことは僕の方が皆に感謝してるよ。あの日、僕を王都に向かわせてくれてありがとう」

マクラナ伯爵からはいつでも使っていいという汽車の切符をたくさんいただいたので、今日は澪音がその切符で隣国へ向かう。
汽車が発車するまで、僕達も車内を見たくて一緒に乗った。

「わぁ!電車を思い出すね。流石、リエッタ様と玲お兄ちゃんの知識も組み込まれてるからか、長距離でも快適そうだね」

澪音の席に座らせてもらうとフカフカな座り心地の座席だった。

「しかもこの車両は一際豪華な造りだね。良い席を用意してくれたんだね」

ルイが車内を見渡している。

「隣国へ向かう線路はまだ途中までで、その先は馬車の旅になるけど、日程がかなり短縮されたね。建設中の線路や駅が完成すればもっと早く着くようになるね」

御者のチャーリーは馬車がなくなってしまうのかと心配してたけど、長距離や日常的にも馬車はまだまだ必要だし、チャーリーはクスフォード家にとって必要な人だ。
御者の仕事がなくなったという人には、優先的にこの汽車の事業関係での仕事で雇用しているそうだ。

「クスフォード家の領地内でも線路や駅、ホテルの建設が進んでいるから、もっと広範囲で人が行き交うようになるね」

「そろそろ発車するみたいだよ!」

ヘンリー様が外の様子を見て教えてくれた。
僕達は駅のホームから澪音に挨拶をする。

「じゃあ、元気で。隣国でのお仕事も頑張ってね。シェイラとクレアが隣国に着いたら、変な男が近寄らないように頼むよ」

「また王都に来てくださいね!」

「澪音、いろいろありがとう。音楽も一緒にできて楽しかったよ。それと、素敵な絵もありがとう」

澪音からは避暑地の湖が描かれている絵を貰った。
端の方には僕とクレアもいる絵だった。
……澪音はいつ湖にいたんだろうか?
その絵のクレアは白いサマードレスを着ている。
僕がクレアの頬にキスをした時と同じ。
絵を受け取った時はやけに澪音はニヤニヤしてたような…。

「皆も元気でな!俺も楽しかったよ。また会おうぜ!」

発車の汽笛が鳴る。
乗客やホームにいる人達の歓声と共に汽車は出発した。
僕達はモクモクと水蒸気と煙を上げてだんだんと遠くなる汽車を見送った。



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