転生した双子アイドルは伯爵令嬢に恋をする ~一途な恋の音色~
デート当日。
僕はスーツを着て髪もセットし、鏡の前で最終チェックをしていた。

「……変じゃないよね?」

髪はサイドに流していつもと違う感じに。
スーツはカッチリし過ぎずカジュアル寄りに。
クレアの綺麗な髪のオレンジブラウンを意識した色のチーフを挿している。

「よし!」

気合いを入れて鏡を睨む!
僕は今までの僕じゃないぞ!!

ノックしてルイが部屋に入ってきた。

「クスクス。気合いが入ってるね。格好いいよ、ルカ」

「本当?変じゃないかな?」

「大丈夫だよ。頑張ってね」

「ありがとう。クレアに振り向いてもらえるように頑張るよ」

ニコリと笑うとルイが驚いた顔をしたあとにクスリと笑った。

「やっと覚悟が決まったんだね」

「うん」

「頑張れ!」

頼もしい兄は僕の背中をポンと叩いてくれた。

「もし……ダメだったら慰めてね、お兄ちゃん」

僕は部屋を出て行った。

「……そんなことはありえないけどね」

ルイは笑顔で帰ってくる弟を想像しながら微笑む。

「僕もお洒落をして愛しのシェイラに会いに行こう」

着替えてからアリストロ家に向かう前にお父様とお母様に挨拶をする。

「これからアリストロ家に行ってまいります」

ソファーにふたりで座りお茶をしている。
お父様はお母様の肩を抱き、愛しそうに見つめている。
いつまでも仲がいい夫婦だ。

「シェイラ様に会いに行くのね」

「ルカもお洒落していたなぁ。ふたりともデートか?」

「フフッ。はい」

「子供が大きくなるのは早いものだな。小さな頃はふたりで手を繋いで走りまわって遊んでいたのに」

「クスクス。そうね。そのあとは疲れてよく一緒に寝ていたわね。特に5歳頃は」

「懐かしいなぁ。ああ、そういえば、今度の公演会について話があるから、夜にまたふたりで私の書斎に来てくれ」

「はい」

屋敷を出て庭園を歩きながら思い出す。
確かに子供の頃はルカと一緒によく寝ていたな。
5歳というと前世を思い出した頃だな。
……あの頃は記憶が曖昧な時がある。
よく寝ていたのも前世との記憶の混乱の影響だろう。

「さて、そろそろルカはアリストロ家を出発できたかな?」

きっとまた赤い顔をしながらクレアをエスコートしていることだろう。
初夏の空を見上げ、可愛い弟のデートの成功を祈った。


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