愛人家
 側から聞いたら変質者の発言なのだが、これには訳がある。
 突然わたしの体は宙を浮き、パパの手の届くところまで近付くと犬のように両手でわしゃわしゃと頭を撫でる。
 体はまるで太いロープが胴体を巻き足がブラブラと揺れる。胴体を抱えている見えないロープに触れると、なんとも言えない感触が伝わる。

「……パパ。いくら家にいるからって、本体でわたしを抱えたらダメだよ」
「ああ、ごめんね。愛子が可愛くって、つい」

 パパは両手でわたしの胴体を掴んで抱っこする。それと同時に胴体の違和感がなくなった。

< 2 / 36 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop