君が大人になれなくても
私は甘い匂いと、部活終了のチャイムでハッとなった。気づいたら学校を出ないといけない時間。その時額に、暖かい温もりを感じた。横には染川くんがいた。
「熱下がってないよね?、、、今から帰るんやろ。迎えは?」
「いいよ、気を使わなくて。歩いて帰るから。」
そう言って立ち上がって荷物を詰めた私の手を止めた。
「まさか歩いて帰るとかいわないよね?」
なんとか誤魔化す方法ないか、、、。
「………あ、家近いから大丈夫。」
「いや、嘘だな。」
「え?」
「え、だって、今考えたやろ。誤魔化そうとして。」
「ごめん。」
「ていうか今日、ひまりさん給食残してただろ、めっちゃ心配なんだけど。」
「ごめん、もう迷惑かけないようにするから。じゃあね。」
そう言って荷物をからい、出ていこうとした。
「もう逃げんな。」
「え?」
「俺から逃げるな。それに迷惑なんて俺は思ってない。」
「ごめん、勘違いばっかりで。迷惑だよね。」
そう言って、腕を引き寄せられ、壁ドンされた。
「ひまりさん、自分を責めすぎ。ひまりさんも俺も何も悪くない。」
「ゴホッ...ヴ...ゲホッゴホッゴホッ...」
急に咳が止まらなくなった。苦しい。
「大丈夫?ひまりさん、水筒持ってる?」
そう言って、カバンから出してくれた。おかげでおさまった。
「このまま家に返してもちゃんと休めるか心配だし、俺ん家泊まるか?」
「え?」
「でも嫌だよな。男の家なんて。」
「…嫌とは思いませんが、迷惑ですよ。」
「あー、そんなこと言うなら来ればいいよ。迷惑か迷惑じゃないか、ひまりさんの目で確かめればいい。」
私は生きているだけで迷惑人間だと思っているから、さっぱり理解ができない。
「荷物は全部持つ。帰るぞ。」
「え、あ、悪いよ、、、。」
「素直にありがとうと言え。」
「あ、ありがとう、、、」
急遽、彼の家に行くことになった。
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