【完結】完璧上司の裏の顔 オタクなコスプレ配信者♀、実はファンだった上司に溺愛求婚される
 そこまで打つと涙が零れてきた。
 思えば父親が急死して、母親は病気になり、守られていたはずの千紗は、急に一人になってしまった。
 こんな都会の片隅で、意地悪な女に馬鹿にされ、エロい動画を上げることでしか生計も立てられず、彼氏もいない。

 ──私ってかわいそう。

 千紗は泣きながら、なみなみとテキーラを注いだ。

「ごめん、通話でもいい? そっちのが楽で」
「うん」
「ビデオ通話にするけど、田吾作さんはカメラオフでいいから」
「顔、見せたくないわけじゃないんだけど会う時までいいかな」

 以前ビデオ通話にした時、音声だけにしたいと言われたのだ。実際会う時に見せたいと。
 千紗のほうは、もう本名も教えて、顔も見せていた。それくらい信頼しているからだ。
 顔出しできないくらい顔に自信がないのかもしれない。
 おそらく冴えない男性なのだろう。
 だが、そんなことはどうでもよかった。
 千紗にとって、田吾作さんは、大切な人。
 だからこそ、借金返済に追われている今、会ったりする気はなかった。
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