【完結】完璧上司の裏の顔 オタクなコスプレ配信者♀、実はファンだった上司に溺愛求婚される

⑭大自然の中

「見て、タロ。あの雲。お前によく似た形をしているわ。わたあめみたいで美味しそう」
「くぅん」

 千紗はだだっ広い草原の上に横たわり、牧羊犬のタロと一緒に流れる雲を見ていた。

 あのあとの騒動はあまり覚えていない。ネガティブなことで有名になった前回と違い、TV出演だとか、演奏依頼だとか、それこそコラボ依頼などがひっきりなしに舞い込むことになった。
 その全てを断り、千紗は母が療養する北海道に戻った。ストーカー事件のあとの騒ぎ、実名と顔バレした時の騒ぎもひどかったが、今回の騒ぎが一番凄かった。
 しばらく井村のマンションに匿われていたが、母も心配だしいつまでも居候するわけにもいかず、牧羊業をしている叔父の家の手伝いをしながら世間から身を隠している。

 叔父が所有する広大な敷地の中で、外へ出ても誰かに見つかることもない。
 誰よりひっそり生きていたいタイプだというのに、どうしてこうなったのかさっぱりわからない。

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