らんらんたるひとびと。
 アスカ侯爵令嬢に敵視され、大会を妨害されている原因は一つしかない。
 私がツバキ団長の姪っ子として登場しているからだ。
 この出来レース100%、アスカ侯爵令嬢が選ばれるはずだけど。
 万が一を備えて、可能性のある奴らを潰そうっていう魂胆なんだろうな。

「アスカ令嬢はこれまでに色んな縁談があったんだけど。全て断ってきた。何でだかわかるかい、ミュゼお嬢さん」
 夕飯を食べながら、白雪姫はフォークを私に向けた。
「鈴様一筋ってことでしょ」
 パンをちぎって口にほうりこむ。
「そうなんだよ。アスカ令嬢はこの道、鈴様一筋21年。婚約解消されたときは荒れ狂ったって話だけど、千載一遇のチャンスが今巡ってきた。本当に好きだそうだよ」
「それって、誰情報?」
「アスカ令嬢の侍女の子達から聞いたから、間違いなーい」
 と言った白雪姫に呆れ返る。
 シナモンはにこにこしながら話を聴いていて。ジェイはガツガツとスープを食べている。
「ミュゼはよく怒らないな。あんだけ嫌がらせ受けてるのに」
 夕食時、それぞれが一日の出来事を報告し合っているけど。
 私の今日の一日の出来事に皆が「なんじゃそりゃ」と怒った。
「怒りを通り過ぎて呆れてるのよ。馬鹿みたいじゃない? 嫉妬して陰で嫌がらせするなんて、余裕のない女のすることでしょ」
 飲まなきゃやってられないわと赤ワインを飲み干す。
 シナモンはクスクスと声に出して笑い出した。
「私なんかおかしいこと言った?」
「いいえ、わたくしだったらそのような嫌がらせを受けたら落ち込むなと思っただけです。ミュゼ様はお強いですね」
 変な所で褒められるので、不思議な気分だ。
 いちいち日々の出来事で怒ってばかりいたら騎士団なんてやっていけない。

「アームストロング家が裏でドラモンド侯爵家の人間と繋がっている可能性はおおいにあるな」
「ミュゼ様、お気をつけくださいませ」
 ジェイとシナモンの言葉に「わかった」と強く頷いた。
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