【短編】隣の席の田中くんにはヒミツがある
 私は両手でハルジオンの茎を持ち胸の前に持って来ると、花にお祈りするように願掛けをした。


「田中くんのケガが早く治りますように」


 すると、花がお願いを聞いてくれたかのように香りが強くなった気がする。


「さ、受け取って?」

「あ、うん」


 戸惑いぎみに受け取ってくれた田中くんは、強くなった香りに気付いたのか表情を緩めた。


「……この花、こんな匂いするんだ? 知らなかった」

「うん、結構甘い香りでしょう? どう? 少しは痛くなくなった?」


 まったく効いていないなんて言われたらどうしようってドキドキする。

 いつもみたいに痛みが軽くなったって言われなかったら、私はおかしなことをしただけってことになるから。


「ん?……そういえば、さっきより痛くなくなってるかも」

「本当に⁉ 良かったぁ」


 田中くんの痛みが和らいだのと、私が彼に変な子って思われなくすんだこと二つにホッとした。

 思わず気が抜けてふにゃあってゆるみきった笑みを浮かべちゃったよ。


「っ⁉ えっと、その……ありがとな、浜田さん」

「ううん、田中くんの役に立てたなら良かった」


 なぜか照れ臭そうに顔を横に向けた田中くんに、今度はしっかりとした笑顔を向けた。
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