【短編】隣の席の田中くんにはヒミツがある
 するとすぐそばにハルジオンという野草が自生していた。

 薄いピンク色の小さな花がぐぐっと伸びた茎の上で揺れている。


 ハルジオンは雑草に分類されるけれど、可愛らしい花を咲かせる野草で私は結構好き。

 まあ、花がつくものは基本何でも好きなんだけれどね。

 ……頑張れば届きそう。


「んっしょ……お願い、力を貸してね」


 私は薄ピンクの花に手を伸ばし、そう口添えしてハルジオンを手折る。

 手折った花を手に田中くんの近くに戻ると、私の行動が不思議だったのかちょっと困惑気味な顔をされた。


「えっとね、私よく具合悪い人に花をあげるんだ。花に願掛けをして渡すと、少し気分が良くなったって言われるの」


 田中くんに変に思われたくなくてちゃんと説明する。

 気休めでしかないかもしれないけれど、少しでも痛みが和らいでくれればいいな。


「へぇ……」


 相槌を打つ田中くんは半信半疑って感じ。

 まあ、いきなりこんな事言われても信じられないよね。

 とにかく物は試しってことで。
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