アッシュフィールド公爵夫妻の偽りの日々と存在しない愛~あなたの愛や絆は期待していませんのでご心配なく~
「自分が見たことを、尾ひれ腹びれ背びれをつけて他人に喋ってしまうのよね。それが厄介なの。後日、わたしは足の病気だとか、アッシュフィールド公爵に折檻されて足を悪くしたのだとか、とにかくありえない理不尽な噂となって流れるわ。よりいっそうコリンたちに恥をかかせてしまうもの。だから歩き方だけでなく、すべての言動に注意しなくては。それを考えたら、気が重くなるわね」
「わたしにはそのような怖ろしい場所に行く勇気はありません」
「わたしもよ、クレア。コリンたちがいるから、まだなけなしの勇気を振り絞れる」

 クレアがベッドメイキングしてくれている間に、テラスへと続くガラス扉を開け、身づくろいを始めた。

 とはいえ、顔と歯を洗い、短くなりすぎた髪を手櫛で整えて終わりだけど。
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