アッシュフィールド公爵夫妻の偽りの日々と存在しない愛~あなたの愛や絆は期待していませんのでご心配なく~
「きみの部屋だ。きみが気を失ったから、おれはまたきみをお姫様抱っこして運ばなければならなかった」
「ちょちょちょちょっ……。嘘、よね? まさか、あれだけの人の前でお姫様抱っこを?」
「あのなぁ……。そこ、気にするところか? 気を失ったきみを運ぶのに、お姫様抱っこ以外にあるか?」
「担架があるでしょう? 王宮なら担架の一つや二つ、あるはずよ。というか、そんなことはどうでもいいのよ。いまはいつ? もしかして、翌日とか翌々日とかってことないわよね?」
「きみがふってきたんだろう? ったく、きみは……。もういい」

 彼は、イラついたように溜息を吐きだした。
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