アッシュフィールド公爵夫妻の偽りの日々と存在しない愛~あなたの愛や絆は期待していませんのでご心配なく~
「やめて」

 怒鳴ってから、廊下を彼らの方にズカズカと歩いて行く。

「いますぐ出て行って」

 虚勢である。

 居丈高に見えるようにがんばったつもり。

 ジェフはともかく、あとの三人の驚愕の表情を目の当たりにし、ちょっとだけスカッとした。

 名ばかりのわたしの後見人である叔父のバイロン・オルコットと叔母のバーバラ、それから従姉のベティが、まるで違う世界からやって来た化け物に出くわしたような表情でこちらを見ている。

「ミ、ミヨ? 驚いた。こんなところにいたのか? ああ、そうか。公爵に下女として雇われたんだな。でかしたぞ。ベティと違っておまえの器量では公爵をたらしこむのは無理だろうから、どうにか金貨をせしめる算段をしろ。盗むとかお涙ちょうだいの話をでっちあげるとか、手段は問うな」

 悪の大ボス「マーダー・チャーリー」が、「ろくでなしはろくでなしのままだ」と言ったけれど、その通りだわ。

 いいえ。それ以上のろくでなしっぷりだわ。

 開いた口がふさがらないとは、このことね。
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