アッシュフィールド公爵夫妻の偽りの日々と存在しない愛~あなたの愛や絆は期待していませんのでご心配なく~
 たしかに、彼の言う通りかもしれない。わたしがそうであるように、虐待されている側は自分が悪いように思い込んでいたり、肯定的に受け止めていたりすることがある。

 とりあえず、彼が伯爵夫人に対してそういうつもりではなかったわけだからよかった。

 ホッとした瞬間、彼に抱きしめられていた。

「これでもう堂々と先に進める。そうだろう? 口づけだけでは、夫婦とはいえないからな」
「おあいにくさま。まだよ、まだまだ。ほんものの夫婦というにはほど遠いわ。先に進みたいのなら、おれ様ではなく『ミヨ様ラブ』とか『ミヨ様至上』にかわることね」
「はっ! 笑ってしまうよ」

 彼は、鼻を鳴らした。
< 301 / 303 >

この作品をシェア

pagetop