アッシュフィールド公爵夫妻の偽りの日々と存在しない愛~あなたの愛や絆は期待していませんのでご心配なく~
「仕方がない。戻ろう」

 即座にコリンが決断した。

「待って、大丈夫。歩けるわ。どうせ歩き方はおかしいし、すでに靴擦れが出来ているの。それに足の筋もおかしくなっているから、挫いたのはついでみたいなものよ」
「ダメだ。すぐに冷やさないと、腫れあがるぞ」

 コリンにきっぱりすっきりくっきり拒否された。

「お願い。これは、わたしたちの初任務よ。それを、こんなことで放棄したくないわ。コリン。あなたの言う通り、わたしは足を引っ張っている。だけど、出来るところまでやってみたいの。どうせお葬式でしょう? しめやかに、ついでにおとなしく端の方で座っているから。だから、お願い。行きましょう。というよりか、連れて行って」

 ここで任務をリタイヤしようものなら、男性三人に、とくにコリンに一生涯ブチブチ言われそう。

「いいんじゃない? 痛いのはおばさんだし。目的地はもう目の前だし。じっとしていれば、ぼくらの邪魔にならないだろうし」

 ヘンリーは腕を頭の後ろにまわし、ふんぞり返った姿勢で生意気なことを言った。
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