アッシュフィールド公爵夫妻の偽りの日々と存在しない愛~あなたの愛や絆は期待していませんのでご心配なく~
「さあ、どうぞ」

 彼は、背を向けると両膝を折った。

「ちょちょちょ、まさかおんぶ?」
「コリンのようにお姫様抱っこは不適切だろう?」

 不適切?

 彼の言葉の選択肢もだけれど、昨夜のお姫様抱っこのことを思い出し、途端に赤面してしまった。

 あれは、口づけ同様闇歴史の一部になるわ。

「いえ。不適切とかではなく、大丈夫なのかと」
「おや? まさか、わしがコリンのようにきみをおんぶした途端に放り投げるとか、おんぶのまま背中から階段の下にダイブするとか、そんなお茶目ないたずらをするとでも?」

 なんですって?

 わたしを放り投げるとか、わたしをおんぶしたまま背中からダイブするとか、それのどこがお茶目ないたずらなの?

 そんなの、どう考えても殺人だわ。

 というか、コリンってそんな荒っぽいことまでするわけ?

 なんて夫なのかしら。厳密には、夫役なのかしら。
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