Special Edition ②

千葉から都心へと夕方の渋滞を乗り切り辿り着いた時には既に19時になろうとしていて、空はすっかり暗くなっている。
コバルトブルーの絨毯が真っすぐ敷かれ、部屋の至る所に点在する蝋燭の炎。
優しい揺らめきとあたたかな灯りを纏う独特な空間。

そんな空間の最奥へと導かれ、一段上らされたその場所に彼は跪いた。

「東 夏桜さん、俺と結婚して下さい」
「っ……」

目の前に差し出されたのは、ワインレッドの色をしたベルベットのジュエリーボックス。
その中には、センターに向かって優雅に厚みを帯びる土台にひと際輝く大粒のダイヤ。
その両脇に添えられたブルーダイヤでさえ、十分すぎるほどの大きさを放っている。

「本気なの?」
「冗談で連れて来れるか」
「っ……」
「早くしろ、めっちゃ照れるだろっ」
「フフッ、一輝可愛い」
「可愛いかねぇよ、いいから早く返事しろ。じゃなきゃ、オート機能で承諾したとみなすぞ」
「いいよ、それでも」
「え?」

スッと差し出された左手。
目の前に跪く一輝に、優しい微笑みを向けている。

「こんな私でよければ……、宜しくお願いします」

久しぶりに緊張した一輝は、目の前に差し出された指に指輪を嵌める。
ゆっくりと腰を上げ、掴んでいる手を優しく引き寄せた。

「お前みたいな危なっかしい女、守ってやれるのは俺だけだから」

ストレートな愛情表現を向けてくれる一輝の腕に抱き締められ、夏桜は心の奥から倖せを噛み締めた。

「それで、……私は何人目なの?」
「今すんのかよ、その話っ」
「だって、教えてくれるって言ったじゃない」

ある意味、空気の読めないクールビューティ。
プロポーズされても、気になるらしい。

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