Special Edition ②

一般人でありながら、全国生放送でのあの一件以来、彩葉への影響は計り知れない。
放送直後は連日のようにメディアが殺到したが、大学病院側の対応と財前家の対応、ASJ側からの対応がとても誠実で、より一層国民の信頼を得たようだ。

郁の思惑通りに、ASJの下がった株価は持ち直すどころか、予想を遥かに超えて上昇し、ブライダルキャンペーンの反響も凄まじい。
第二弾として、ベビーキャンペーンを導入することが決定している。



「んっ……」
「ごめん、起こしたか?」
「いつの間にか、寝てたのね」
「ママ休んでって、俺らの子が訴えたんだろ」
「フフッ」

リビングで仕事をしている郁さんを横で眺めているうちに、寝落ちていたようだ。
気持ちよさそうに寝ている彩葉の髪を郁は優しく撫でていた。

「少し散歩にでも行くか?」
「仕事はいいの?」
「急ぎじゃないから大丈夫」
「じゃあ、お願いしようかな」

立ち上がるのも一苦労の彩葉を支え、ゆっくりと立ち上がらせる。

「桜井さん、少し散歩して来ます」
「分かりました。お気をつけて、行ってらっしゃいませ」

家政婦の桜井 登紀子(五十八歳)に声を掛け、玄関へと向かう。
玄関には、紫外線避けの帽子と薄手のカーディガンが掛けられていて、それを彩葉にそっと掛ける。

郁の腕に腕を絡ませ、もう片方の手でそっと掴んで。
寄り添うようにしてゆっくりとした足取りでマンション周辺を散歩する。

「郁さん」
「ん?」
「本当に性別聞かなくていいんですか?」
「いい。どっちでも元気に生まれて来てくれれば、それで十分」


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