アイドルなんかじゃありません!わたしの元義弟なんです!!

ピンチは続く

「当面の心配はお店の維持か、スタッフにはこれ以上の迷惑をかけられないわね」

 母の家に泊まった翌日、私はエステサロンmodération赤坂店の事務所で、パソコンに向かい頭を悩ませていた。
 昨日に引き続き、パソコン画面にはキャンセルを知らせる通知が届いている。このままだとお店を立ち上げて以来、最低の予約率になるだろう。

「まさか、ここまであの記事に影響されるなんて……」

 記事の内容が、HIROTOが私と付き合った制裁で、事務所に契約を更新してもらえなかったような書き方だった。そして、別れれば、今後の活動を継続できると、示唆されている。
 その記事を見たファンなら、「そんな女とさっさと別れて、活動を続けて欲しい」と思うだろう。

 本当の理由は記事とは違うけれど、私のせいで大都が事務所と契約更新をしなかったのも事実だ。
 ファンの怒りが私に向くのも仕方がないと感じてしまう。
 そして、modérationへ癒しを求めてくるお客様が、面倒事に巻き込まれたくないと思うのも仕方ない。
 なによりも、自分が巻き起こした失敗で撮影された写真がこの騒ぎの原因を作ってしまっているのだ。

 4店舗目を予定していた資金がある、それを充当すれば当面はどうにかなるはずだ。でも、この状態がいつまで続くのか……。
 昨晩、母には万が一のときの資金援助をお願いした。母は二つ返事で了承してくれたけれど、出来るなら迷惑をかけずに解決したい。
 しかし、これと言って打開策が浮かばない。このまま、嵐が過ぎ去るのをジッと待つしかないのだろう。

「はぁー。こういうのを八方塞がりって言うのかしら……」

 ついつい、愚痴が口をつく。気分転換に隣の休憩室へ向かおうと立ち上がった。すると、下っ腹に違和感がある。



 
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