アイドルなんかじゃありません!わたしの元義弟なんです!!
「これ……」

 思いがけない、出来事に戸惑いながら顔を上げた。私を見つめている大都と視線が絡む。

「ん、だいぶ遅くなったけれど、婚約指輪」

「うれしい……」

 大都に出会う前は、結婚願望がなく。婚約指輪を嵌める日が来るなんて考えたこともなかった。ましてや、婚約指輪がこんなにもうれしい物だなんて、想像すらしたことがなかった。
 指輪の輝く左手に視線を落とした私は、その先の言葉を続けたいけれど、胸がいっぱいで唇が震え、言葉の代わりに涙で視界が歪む。
 
「泣くなよ」

 涙で濡れた私の頬を大都の大きな手が添えられた。
 節のある大きな手、この手に慰められ安らぎを感じた。そして、この先も幾度となく、この手を取り、ともに歩んで行きたい。

「うれしいの……。大都……愛してる」

 いままで、受けて返すだけだった愛の言葉を自分から先に口にした。
 大都の綺麗なアーモンドアイが弧を描き、優し気な笑顔を浮かべる。

「俺も愛してる」

 節のある親指が私の涙を拭い、唇が重なった。温かな感触に瞼を閉じた。
 甘く蕩けるような口づけに、頭の芯が溶けていく。
 合わせた唇を食むように、何度も何度もキスをして、大都の愛に溺れる。
 
 形の無いはずの”幸せ”は、いま、私の手でキラキラと輝いている。




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