アイドルなんかじゃありません!わたしの元義弟なんです!!

星のように輝いています

 人の噂も七十五日と昔から言うけれど、日々新しいニュースやゴシップにあふれている現代。大都の初恋発言から半月も経った今では、人々の記憶は新しいネタで上書きされ、私のまわりは落ち着きを取り戻していた。
 体調も回復し、久しぶりにお店へ顔を出した。
 心配していた予約率も前年より落ちてしまったが、報道をされたころの危機的状況に比べれば、あと一息といった感じだ。

「オーナー、体調大丈夫ですか?」
「本当、心配しました」

 声をかけてくれたのは、推し活仲間で、modérationのスタッフの松本さんと福田さんだ。

「ありがとう。大変なときに長いお休みをもらって迷惑をかけたわね。それに福田さんは倒れたときに助けてもらって、感謝しているのよ。本当にありがとう」

「いえ、お役にたてて良かったです」

「それで、ふたりにはお礼と言っては何だけど、約束のモノを用意させてもらったの。受け取ってくれるかしら?」

 松本さんと福田さんには、大き目の封筒を手渡した。
 それをふたりは、不思議そうな顔で受け取る。

「あの、中身、見てもいいですか?」

「もちろん、見て欲しいわ。よろこんでもらえるといいけど……」

 ガサガサを中身を覗いたふたりは、「キャーッ!」と歓喜の雄たけびを上げた。

 袋の中身は、HIROTO直筆の名前入りサイン色紙と、写真集(こちらもサイン入り)。

「ありがとうございますっ! 祭壇に祀らせて頂きますっ!!」

「さ、祭壇⁉」

 あらぬ言葉に戸惑う私……。
 聞けば、オタクは、推しのグッズを飾る棚を祭壇と呼ぶらしい。

「ホント、うれしい! あとは明日発売のGleamを祭壇に飾れば完璧です」

「Gleamって、あのファッション雑誌⁉」

「そうですよ。この前の初恋騒動のテレビで放送されていた、撮影現場の雑誌はGleamなんですよ」


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