アイドルなんかじゃありません!わたしの元義弟なんです!!
 このまま流されて、体を温め合っても心までは埋まらない。
 私は、寂しいままだ。
 そればかりか、この後、大都とも気まずくなってしまう。
 
 なけなしの理性をかき集めて、大都の口を手のひらで押さえた。

「ごめん。でも、今の関係を進めたくないの」

 大都の瞳が驚いたように見開く。
 隙だらけの私に断られるとは、思ってもみなかったはずだ。

「君が本当の弟なら良かったのに、そうしたら、ケンカしたり、ちょっとした行き違いがあっても、姉弟の関係なら崩れないものね。君と家族だったら、私の身に何かあったとき、連絡をもらった君が、病院に駆けつけて心配してくれるはずだわ」

 大都の瞳が柔らかなカーブを描き、口を抑えていた私の手が大きな手に包まれ、口元から外される。
スパイシーオレンジの香りがいっそう強くなり、私は大都の広い胸に抱きしめられていた。

「俺が勝代さんから生まれるのは無理だけど、お姉さんと一緒に居たい。ケンカしたり仲直りしたり、いろいろな話しをして、わかり合える関係になれればいいと思っている。もちろん、お姉さんの身に何かあれば、心配するし病院にも駆けつける」

 広い胸から伝わる体温が心地いい。
 私は、瞼を閉じて、そっと頬を寄せた。
 
「でも、男女の関係になったら、まだ若い君はいつか私に飽きて、どこかに行ってしまうでしょう。だから、姉弟がいいの」
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