アイドルなんかじゃありません!わたしの元義弟なんです!!

ルール違反はしません

 年下で義理の弟だった大都を意識するなんて、まったく私らしくない。
 面倒を引き込むような関係は自分の中ではルール違反だ。

 でも、「おはよう」と朝の挨拶を交わし、「いただきます」とテーブルに向かい合う。そして、「いってらっしゃい」と見送られるのは悪くない。
 それは、恋人同士より姉弟として接しているからこそなのだと思う。
 この距離感を間違えないようにしないと、後で後悔するはずだ。
 
 処理しきれない感情に振り回されないように、適度な距離を保ちたい。
 それなのにどうしていいのか、わからずに途方に暮れている。

 仕事に向かうタクシーの中で、流れる景色を見ながら、大都のことを考えていると、カーラジオのFM放送がBACKSTAGEの曲を流し始めた。
 
 意識しないようにしていても、耳が勝手に大都の声を拾い上げてしまう。男らしい低音ボイス、それでいて甘さを含んだ声は耳心地がいい。

 ベッドの中で抱きしめられ、すぐそばで聞いた大都の声の記憶がよみがえり、思考を埋めつくす。

 はぁー、脳内から大都を追い出したい。

 そう思っている時点で、頭の中は大都のことでいっぱいなのだ。
 そんな自分自身に呆れて、頭を抱える。

 すると、バッグの中でスマホが小さく震えてメッセージを受信した。
 取り出したスマホの画面を見れば、友人の佐久良麻美からのメッセージだ。
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