アイドルなんかじゃありません!わたしの元義弟なんです!!
 はぁー、どうしたらいいんだろう。

 シャワーヘッドから流れ出す温かな水滴が肌の上を滑り落ちていく。
 その水滴が排水口に消えていくのを見つめながら、ため息を吐いた。

 自分の決めたルールの中で快適に過ごしているつもりだった。
 今までの考え方がすべて間違っていたとは思わない。けれど、正しかったかと言えば、それも違うような気がする。

 これが仕事だとして、間違いがわかったなら正しい方向へ修正をすればいいのだが、自分のこととなると何を修正したらいいのかが、わからない。
 そもそも、何が間違いなのか、どこで間違ったのかも漠然とし過ぎている。

 その答えを見つけられない限り、得体の知れない寂しさを感じるのだろうか。

 キュッをシャワーのカランを押し上げ、バスルームをでる。洗面台の大きな鏡に自分の姿が映り込む。
 メイクを落とした素顔の自分は武装解除の状態で、いつもより少し頼りなく見える。

「子供の頃に戻って、何もかもやりなせたらいいのに……」

 ため息交じりに、バスタオルで体を拭い。いつものようにパックをしながらボディクリームを塗り込んでいく。
 
 すると、コンコンとノック音がした。

「はーい、なに?」

「お姉さん、Tシャツとか持っている?」

「Tシャツぐらい、持っているわ」

「じゃ、リビングで待っているから、Tシャツ着てきて」

 
  


 
 
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