アイドルなんかじゃありません!わたしの元義弟なんです!!

お姫様じゃありません

 大都のリクエストに合わせて、Tシャツにスポーツレギンスを着た私は、そろりとリビングのドアを開いた。
 私の姿を見つけると、大都は右手を肩まで上げ、選手宣誓のように言う。

「この前のマッサージのお礼に、俺がお姉さんにダンスのレクチャーをしまーす。異論は認めません」

「ナニそれ、強制参加なの?」

「そうそう、あきらめて」

 と、大都がニヤリと口角を上げる。
 いつもの様子に落ち込んでいた気持ちが浮上し始め、私は大都の提案に乗ることにした。

「では、先生よろしくお願いします」

「はい、よろしくお願いします。せっかくなのでお姉さんをお姫様にしてあげます」

「お姫様?」

 聞きなれない単語に訝し気に眉をひそめた。そんな私を気にするでもなく大都は話しを続ける。

「社交ダンスのスローフォックストロット、初級編でいきまーす」

「私は社交ダンスなんて出来ないし、君だって分野が違うじゃない」

「基本のステップは習ったから出来ます。お姉さんにはちゃんとレクチャーするから安心して。じゃあ、先ずはホールドから、半分ずれた体制で向かい合います」

「それより、言葉使いが……」

「先生だからね」

 と言って、大都は片眉を上げ悪戯っぽく笑う。つられて頬を緩ませた私は、言われた通りに大都の正面から半分ずれた位置に立ったが、直ぐに指導が入る。

「お互いの距離はつま先がこぶし一個分だけ離れたぐらいで」
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