アイドルなんかじゃありません!わたしの元義弟なんです!!
「どんだけ飲んだんだよ。ちょっと目を離すとこれだから……。ホント、隙だらけで、あぶなかっしいな。ほら、首に手をまわして、大人しくして」

「はーい、わかりましたぁ」

大都が私をお姫様抱っこにして、マンションのエントランスホールを進む。コンシェルジュの人が見て見ぬ振りで「お帰りなさいませ」といつもどうりに声をかけてくれるので、「どぉもー」と、にこやかに手を振った。

エレベーターホールに着くと大都の不機嫌な声が降りてくる。

「由香里にとって俺って?」

エレベーターに乗り込んだ。独特の浮遊感で余計にフワフワしているような感覚だ。

「彼氏だと思っていたけど、私の勘違いだったみたい。私ってば、痛い女だよね。でも、もう終わりにするの」

「なんでそんな風に思ってんの?」

「なんでって? それは……大都が……私のこと……」

答えようとすると、急に悲しくなってポロポロと涙が溢れ出てきた。
酔っ払いの私は、情緒がジェットスター並みに激しく上下する。

「ホント飲みすぎ、いきなり泣かないで」

大都は焦っているけれど、私は涙がとまらない。
ムリに涙を止めようとすると、しゃくりが上がる。

「……ごめん。俺が由香里を不安にさせたみたいだ」

 大都のつぶやくような声が聞えた。

 エレベーターが到着して、スタスタと廊下を歩きながら何かを思い出したのか、大都はムッとした表情に変わり、不満を口にする。

「でもさ、仕事して帰って来たら、彼女が男とハグしてんの見た俺の気持ちとか、どうよ」

コイツ、自分のこと棚に上げた!
ムカつく!

ムカついて涙がとまった私は、ポカポカと大都の胸を叩きながら反撃に出る。

「あんなのただのハグじゃん。先生はアメリカ帰りなの。大都だって女のコと裸でイチャイチャして、雑誌に載っていたじゃない。やらしー」
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