アイドルなんかじゃありません!わたしの元義弟なんです!!

アイドルなんかじゃありません

 エステサロンmodération 赤坂店の事務所でパソコンに向かっていても、大都の写真の一件が気になって、仕事に集中でない。

 手元に置いたスマホを、5分おきに見ている気がする。
 これじゃいけないと、パソコンに視線を戻したとたんに、メールの着信音が鳴りだし慌てて見れば、通販サイトのオススメメールだ。
体から力が抜けて、机の上にパタッと伏せる。
こんな調子で一日中、大都のことで落ちつかない。

「どうしよう……」

ハッと思い立ち、スマホをタップする。
あの写真が出回れば、ファンがザワついたり、BACKSTAGEの公式からコメントがでたりして、なんらかの動きがあると思ったからだ。
この前、福田さんと松本さんにHIROTOのプレゼンを受けたときに入れたSNSを開く。BACKSTAGEの公式ツイッターには、ハッシュタグ「撮影したて」「ダンプラ」と書かれた、ダンスプラクティスがアップされていた。

メンバー7人で力強く踊る姿は、本当にかっこいい。
もしも、あの写真がスクープとして世の中に出てしまったら……大都からこの場所が奪われてしまうのかも知れない。そう思うと背筋が寒くなる。

スマホをスクロールして、いろいろな記事を見漁ったが、 幸いにもあの写真にまつわる話題は取り上げられてはいなかった。
脱力した体を支えるように顔を両手で覆い、はぁ~と息を吐き出すと、指の間から息が漏れていく。

窓から見える日差しが弱くなり、空が色を変え始めていた。時計を見れば午後5時になろうとしている。
すると、スマホの着信音が鳴り出した。飛びつくようにスマホをタップする。

「もしもし、大都⁉」

『あ、連絡遅くなってごめん。今夜からしばらく、由香里の部屋へ帰れなくなった』

予想していたこととは、いえ。ズキンと心が、痛い。

 
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