飼い始めたイケメンがずっとくっついて離れてくれない。
「そうそう。心のは試作品だったから言葉が喋れたみたいなんだけど、今打ったやつはちゃーんと猫になれるやつだから♡」


 ……てことは、


「猫の姿で、猫の鳴き声。 どこからどう見ても、かわいい猫ちゃんのかーんせーい!」


 紗英は、呆然とする私の頭をいいこいいこ、と撫でた。


「フフッ♡いいないいなぁ、そんなかわいい猫ちゃんになれるなんて。凛、今までありがとう。凛のことは一生忘れないよっ!野良猫の世界って厳しいらしいから、車に轢かれるか餓死するかカラスに噛み殺されるかする前に、頑張っていい人に拾われてね?」

「ンニャ、ンニャァ」

「そうだねそうだね、まさか黒猫ちゃんなんてねぇ。難易度あがっちゃったね♪」


 ちょっと待って、ちょっと待って!


「じゃあ頑張ってね♪ 良い猫ライフを~」


 紗英は私の制服を拾うと、ちょうど近くに横付けされた車に乗ってバタンッと扉を閉めた。


 ブロロロ……と去っていく車の音を聞きながら、私はやっぱり動けないままで、もう一度声を出してみる。


「……ミャー……」


 ……嘘でしょ。


 どうやら私

 完全な、猫になってしまった。





 
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