Flower~君の美しい記憶の中で今日も生きていたい~
《side.桜坂恭介》
しゃがんでは立って、歩いては写真を撮る霞を植物園のベンチに座って眺めていた。憧れの海外にはしゃぐ彼女に振り回される時間は楽しい。


彼女はころころと秋の空のように表情を変化させる。


__I am happy in the sight of you. I am happy, all day long, in the thoughts of you.
あなたを見ていると幸せだ。あなたのことを考えていると一日中幸せだ。


そんな言葉がある。

こんなに穏やかで、幸福を感じるのはいつぶりだったか。思い出せないほどの昔話だ。


綺麗な花を見つけた彼女が嬉しそうに俺に微笑みかける。


今日のような晴れている日なんて大嫌いだった。俺が一度死んだ日とそっくりだから。なのにその晴れさえも彼女は好きにさせてくる。


「恭介さん次はどこに行きます?」


走ってきた霞をただ見つめる。動かない俺に彼女は首を傾げた。


「恭介さん?聞いてます?」

死にたいと願った君に死ぬなと言った。
俺が死ぬために生きていると告げたとして、君はなんと言うのだろうか。

俺のことを神様だと言ってくれた君にこの手で多くの命を奪ったと告げたとして、明日も君の記憶の中に俺は生きれるだろうか。
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