Flower~君の美しい記憶の中で今日も生きていたい~
《side.佐々木霞》
目の前にいる私を見つめたまま動かない恭介さんにどうすればいいのか分からず困り果てていた。
その時彼はわずかに口を動かす。聞き取れないほど小さな声だった。そして恭介さんはゆっくりと立つと私の横を通って植物園の出口の方へと向かう。
「舟にでも乗るか?」
「は、はい……」
植物園を出てからどこか上の空な恭介さんと2人、舟に乗った。優雅なクルーズは英語で観光案内しながら海を走る。
ウェイターが運んできてくれたジュースを彼の隣で飲んだ。恭介さんはシャンパンを片手に柵にもたれ、夕焼けに染まるシドニー湾を眺めていた。
「恭介さんはどうして昨日祈ってないのに、駆けつけられたんですか?」
「君にあげた餞別のおかげだ」
トン、と人差し指と中指で私の額を突く。餞別という言葉を聞いて、額へのキスを思い出して耳まで一瞬にして熱くなる。
「そのまじないは君が命の危機に晒された時に俺が感知できるもの。つまりあの日、君は階段から落下死するところだった」
「落下死、ですか」
残り少なかったシャンパンを彼は飲み干すと、ウェイターから新しいものを受け取った。
目の前にいる私を見つめたまま動かない恭介さんにどうすればいいのか分からず困り果てていた。
その時彼はわずかに口を動かす。聞き取れないほど小さな声だった。そして恭介さんはゆっくりと立つと私の横を通って植物園の出口の方へと向かう。
「舟にでも乗るか?」
「は、はい……」
植物園を出てからどこか上の空な恭介さんと2人、舟に乗った。優雅なクルーズは英語で観光案内しながら海を走る。
ウェイターが運んできてくれたジュースを彼の隣で飲んだ。恭介さんはシャンパンを片手に柵にもたれ、夕焼けに染まるシドニー湾を眺めていた。
「恭介さんはどうして昨日祈ってないのに、駆けつけられたんですか?」
「君にあげた餞別のおかげだ」
トン、と人差し指と中指で私の額を突く。餞別という言葉を聞いて、額へのキスを思い出して耳まで一瞬にして熱くなる。
「そのまじないは君が命の危機に晒された時に俺が感知できるもの。つまりあの日、君は階段から落下死するところだった」
「落下死、ですか」
残り少なかったシャンパンを彼は飲み干すと、ウェイターから新しいものを受け取った。