Flower~君の美しい記憶の中で今日も生きていたい~
「それがある限り数秒の猶予があれば俺は君を助けられる。……だけど気をつけろ。例えば幽霊からのイタズラ、とか」


これまで幽霊からの悪質なイタズラは受けてこなかった。だけど最近ついてないことが多いから、確かに用心しなきゃ。


「前に恭介さんは私の未来が見えないと言ってましたけど、それは今も変わらないですか?」


「……ああ。見えないよ」


「それはつまり私が、その、近々死ぬようなことに……巻き込まれるとか、そういう」


それ以上は怖くて言えなかった。前の私は確かにお母さんの遺言がなければ死にたいと思っていた。だけど今は違う。


『いつかあなたに幸せをもたらしてくれる人が現れるわ。それまで、生きて。耐えるのよ』


お母さんが言ってた人は隣にいる彼なんじゃないかって、思ってきている。だって私今こんなにも幸せを感じているから。


「君は死なない。俺が決して殺させはしない」


鎖骨にあるアザがじくりと痛んだ。夕焼けによって彼の表情は逆光になり読み取れない。


力を抜いてしまったせいで手から空のグラスが抜け落ちる。間一髪のところで恭介さんがキャッチした。


下を向いていた彼が顔を上げて、私たちの距離は近くなる。
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