悲恋の大空
 パチパチパチ!





[朝蔵 大空]
 「え! え!」



 気付くと、私は大勢の人達から拍手を受けていた。



[乗馬部3年生]
 「こんなところに原石が眠っていたとは、どうだい? うちの乗馬部に入ってみないかい?」


[朝蔵 大空]
 「ええ!?」



 超イケメンから部活勧誘された!



[狂沢 蛯斗]
 「そうはさせません! 大空さんはうちの写真部の部員ですから!」



 え! なんの話?!



[乗馬部3年生]
 「それは残念、じゃ」



 あ、イケメン行っちゃった……。



[狂沢 蛯斗]
 「はぁ、お腹が空きました」


[巣桜 司]
 「ぼくもですぅ」



 そっか、途中でお昼休憩を挟まないといけないんだったよね。



[朝蔵 大空]
 「あの、一度公園エリアに戻りませんか?」


[花澤 岬]
 「ああ、そうだな」



 お弁当を食べに、私達は公園エリアへと向かった。



[朝蔵 大空]
 「……///」



 だ、男子達とご飯食べるのはちょっと緊張するな、このグループ女子私ひとりだし……。



[女子グループ]
 「「「ヒソヒソヒソ…………」」」


[朝蔵 大空]
 「……?」


[女子A]
 「見て、またあの子」


[女子B]
 「うわー、また男といるし」


[女子C]
 「男子しか友達いないんじゃなーい?」



 背後からそんな声が聞こえてきた気がした。


 私のことじゃ……ないよね。



[巣桜 司]
 「こ、古道先輩」


[古道 大悟]
 「ん、なぁに?」


[巣桜 司]
 「キャラ弁、凄いクオリティ高いですね……!」


[古道 大悟]
 「ありがとう、これ自作なんだー」


[巣桜 司]
 「すご!」



 あのふたりは女子力高い感じがする……。



[巣桜 司]
 「ぼくもキャラ弁挑戦してみようかな……」


[狂沢 蛯斗]
 「あ、ボクのお弁当は普通ので良いですよ、キャラ弁とか恥ずかしいのでやめて下さい。 子供じゃないんですから」



 ちょっと狂沢くん!



[朝蔵 大空]
 「は、花澤先輩のお弁当は……きゃ!」



 花澤先輩のお弁当、なんか全部が黒い!



[花澤 岬]
 「俺も自分で弁当作ってる」


[朝蔵 大空]
 「それ、食べられるんですか?」



 炭食べてんのこの人……?



[花澤 岬]
 「うん」


[朝蔵 大空]
 「人間の食べ物じゃないですよ!」



 つい失礼なこと言っちゃった!



[花澤 岬]
 「俺は旨いと思うんだけどな」


[狂沢 蛯斗]
 「花澤先輩、料理下手、味覚音痴、花澤先輩の知らないとこ、知れて嬉しい!!」


[巣桜 司]
 「えぇ……」



 なんか狂沢くんが喜んでるからいいや。



[女子A]
 「チッ……うざ、ご飯不味くなるしあっちで食べよー」


[女子B]
 「そうだね」


[女子C]
 「キモい」



 さっきまで近くで食べていた女子達がどこかに走って行ってしまった。


 き、気にしすぎだよね、私……。



[古道 大悟]
 「朝蔵ちゃん」


[朝蔵 大空]
 「は、はい!?」


[古道 大悟]
 「大丈夫……?」



 さっきの悪口のことかな……でも、私に向けられた悪口って決め付けるのはよくない、よくない……。


 あ、ダメだ、目頭が熱くなってきた。



[朝蔵 大空]
 「わ、私御手洗に行って来ますね」


[古道 大悟]
 「う、うん」



 私は涙が出て来る前にトイレへと逃げ込んだ。


 私は個室に入ってさっきのことを考えていた。



[朝蔵 大空]
 「はぁ……」



 どうしてだろう、幸せってなんでずっと続かないのかな?


 どうして、辛いことが絶えないんだろう。


 私、幸せになっちゃいけないのかな。





 コンコン……。





[朝蔵 大空]
 「!?」



 何……ノック?


 個室なんて他にいっぱい空いてたと思うんだけど……。



[???]
 「……」



 ドアの向こうに誰かが立ってる、そんな気配がする。



[朝蔵 大空]
 「は、入ってま……す」


[???]
 「ごめんね」



 え、声が聞こえた、男の人の。


 なんで?



[???]
 「ごめん、ごめん」



 普通、女子トイレに男の人の声が聞こえたら叫びを上げるのが普通の女子だろう。



[???]
 「ねえ」



 だけど私は、不思議と怖くはなかった。



[???]
 「おいで、おいで」



 私はこの声を知っている。



[朝蔵 大空]
 「誰……?」



 私は急いでトイレから出たが、そこに人の姿は無かった。


 そこでやっと恐怖の感情が沸いてきた。


 ひとりで居たくない、そんな気持ちでグループの皆んなの元へと戻った。


 ……。



[狂沢 蛯斗]
 「あ! やっと戻って来た」



 広場へ行くと、もう出発の準備を終わらせている皆んなの姿が見えた。



[花澤 岬]
 「大丈夫か?」


[朝蔵 大空]
 「は、はい、すみません」



 さっき泣いてたのバレてないといいな……。



[卯月 神]
 「……」


[加藤 右宏]
 「おーイ!」



 空から慌てて降りてくるミギヒロの姿がそこにあった。



[卯月 神]
 「ミギヒロくん……」


[加藤 右宏]
 「はぁはぁ……サっき、とんでもネぇ霊気を感じなかったカ?」


[卯月 神]
 「僕も感じました」


[加藤 右宏]
 「オ、オレあいつの様子ちょっと見てくる!!」



 ミギヒロは急いで大空のグループの元へと飛んで行く。



[朝蔵 大空]
 「あ、ミギヒロ? って、1年生のあんたがなんでここにいるのよ」



 この行事に参加出来るのは2、3年生だけのはずだけど。



[加藤 右宏]
 「大空ー!」


[古道 大悟]
 「誰この子、怪しいゴーグル……」



 古道はゴーグルを着けた男が急に現れて警戒している。



[朝蔵 大空]
 「あ! こちら私の従弟(いとこ)のミギヒロです!」



 色々説明が面倒臭いので、ミギヒロのことは他人には従弟と言って紹介している、本当は赤の他人だけど。



[巣桜 司]
 「あらっ……」



 司くんは家がお隣だからミギヒロのことは一応知っているんだよね。



[朝蔵 大空]
 「なんか用?」


[加藤 右宏]
 「突然ですガ! ここからは助っ人としてこのミギヒロくんがつかせてもらいマす!」


[朝蔵 大空]
 「は?」



 そこからはミギヒロのサポートのおかげで、難関なギミックも魔法の力でちょちょいのちょいでスタンプも全て集め切ったしまった。



[巣桜 司]
 「スタンプコンプリート出来ましたぁ!」



 司くんが嬉しそうにその場でぴょんぴょんと跳ねる。


 か、可愛い……。



[狂沢 蛯斗]
 「貴方やりますね!」


[加藤 右宏]
 「へへーん、どうヨ! これがミギヒロ様のお(ちから)!!」


[古道 大悟]
 「やっばーい! もしかしたらオレら、1番にゴール出来るんじゃない?」



 各自、スタンプコンプリートによって興奮が抑えらないようだった。


 こ、これズルだよね、普通に。


 岩山の頂上にあったスタンプとか、生身の人間が取りに行くには無理難題すぎた。



[花澤 岬]
 「まだだ、ホールまで走るぞ」


[古道 大悟]
 「よっしゃ行くぞー♪」



 あの真面目な花澤先輩も何もツッコまない……でも花澤先輩は悪くない、この難しすぎるスタンプラリーが悪い。



[巣桜 司]
 「わーん、待って下さーい!」


[狂沢 蛯斗]
 「貴方もっと早く走れないんですか! 刹那くんからは巣桜くんはめちゃくちゃ足が早いって聞きましたよ!」



 あ、その件にはあんま触れないほうが良いよ、狂沢くん。



[朝蔵 大空]
 「うわーん、皆んな早いよ〜」



 その時、先頭をぶっちぎりで走る古道先輩の姿が目に入った。



[朝蔵 大空]
 「あの人……早い」



 ……。



[二階堂先生]
 「おめでとう、まさかお前らのグループが1番だったとは……途中まで永瀬のグループが優勝するかと思っていたよ、はは」



 それは私も思ってた。



[狂沢 蛯斗]
 「優勝賞品はなんなんですか!」


[二階堂先生]
 「俺も知らんけどなんか今晩の食事会で発表があるみたいだぞ」


[巣桜 司]
 「晩御飯までお預けですかぁ……」



 ふーん、なんだろ、優勝賞品。


 ワクワクした気持ちのまま、私達は夜を待った。



[土屋 遊戯]
 「愚民どもお疲れ〜! 優勝賞品は、『遊戯様の下僕券1年分』だよーん♪」



 なっ……。



[男子A]
 「俺達そんなことの為に死にそうな目に遭わされてたのかよ!!」


[女子A]
 「ふざけんな!!」



 一斉におしぼりを土屋先輩に投げつける全校生徒達。



[土屋 遊戯]
 「うわー! な、なんだよお前らぁ。 今夜の旨い飯食えてんのもぼくのおかげなんだぞー!!」



 土屋先輩は逃げるようにパーティールームから出て行った。



[二階堂先生]
 「死にそうな目に遭った、ってなんのことだ? 各観光スポットの分かりやすい場所に置いといただけのはずなんだが……」



 やっぱり、絶対おかしいと思った、土屋先輩の仕業だったのね。


 何がしたかったのあの人……。



[花澤 岬]
 「土屋……」



 花澤先輩も呆れているように見える。



[古道 大悟]
 「ねぇ、朝蔵ちゃん」


[朝蔵 大空]
 「は、はい!」



 隣に座っている古道先輩が声を掛けて来た。



[古道 大悟]
 「オレ、君のことちょっと誤解してたかも」


[朝蔵 大空]
 「え?」



 古道先輩が私に何か誤解を……?



[音乃 渚]
 「皆さん、グラスは持ちましたか?」



 前で音乃会長が喋っている。



[音乃 渚]
 「とても大変な一日だったと聞きましたが……その分皆さん絆を深めることが出来たようですね、それじゃ……」





 ガッシャーン!





 皆んなで乾杯をしようとした時だった、窓ガラスを割って何かがパーティールームに侵入してきたのだ。



[原地 洋助]
 「だからアンパンはつぶあんに決まってんだろーがァァァ!!!!!」



 !?


 何? 理解出来ない……。



[仁ノ岡 塁]
 「俺はこしあんを譲らんぞ! 洋助ーー!!!」



 嵐のように舞い込んで来たソレは、料理の皿が並ぶテーブルを次々と()ぎ倒して行く。


 叫び声をあげて逃げ回る生徒達、その光景は正に地獄絵図。


 え、え、今から皆んなでお食事パーティーって言う展開じゃなかったの?


 皆んなパーティールームから逃げて行く。



[不尾丸 論]
 「先輩ふたりをとめて……」


[朝蔵 大空]
 「不尾丸くんまで?! どうして3人はこんな所にいるの?」


[不尾丸 論]
 「それは分かんないけど、オレは喧嘩するふたりを追って来てたらここに……」



 喧嘩の勢いでこんな所まで来たってこと!?



[朝蔵 大空]
 「と、とめるってどうしたら……」


[不尾丸 論]
 「お願い、朝蔵先輩!」



 ぐっ……年下からのお願いには弱い私である。



[朝蔵 大空]
 「や……やめてふたりともー! 私は、つぶあんもこしあんも、どっちもすきだよー!!」


[仁ノ岡&原地]
 「「……!!」」



 私の声がふたりの耳に届く。


 仁ノ岡くんと原地くんは取っ組み合うのをピタっとやめる。


 そしてふたりは私を見つけて私の元へと飛んでくる。



[原地 洋助]
 「先輩今ボクのこと好きって言った!?」


[仁ノ岡 塁]
 「いーや今のは我に対しての言葉だ」



 この子達耳おかしいんじゃないの。



[不尾丸 論]
 「塁、洋助、帰ろう」


[仁ノ岡&原地]
 「「……ああ」」


[不尾丸 論]
 「あ、そうだ」



不尾丸くんが杖をつきながらゆらっと近付いて来る。



[朝蔵 大空]
 「ちょっと……」



 更に不尾丸くんが近付いて来る。



[不尾丸 論]
 「この前のクッキー、美味しかったよ」


[朝蔵 大空]
 「……///」



 不尾丸くん顔近い……てか、こんな小悪魔な表情する子だったっけこの子。


 私はなんだか恥ずかしくて不尾丸くんから目を反らしてしまう。



[永瀬 里沙]
 「わーお……やっぱり1年生は積極的ね」


[仁ノ岡&原地]
 「「お騒がせしましたー」」



 それで済むような話じゃない……よね?


 あーあ美味しそうなご飯が台無し……。



[猿A]
 「うめー! うめー!」


[猿B]
 「3秒ルールだぜー!!」



 うわ下に落ちたもの食べてる……。



[古道 大悟]
 「朝蔵ちゃん、今の何」


[朝蔵 大空]
 「え? わ、私は、し、知らないです!」


[古道 大悟]
 「……何」



 あれ、古道先輩の目、なんか怖い……疑うような目を向けられている気がする。


 それになんだか気分が……。



[朝蔵 大空]
 「わ、私外の空気吸ってきますね」



 私はめちゃくちゃになったパーティールームを後にした。



[古道 大悟]
 「まだ信用するには早かったかな」



 ……。



[加藤 右宏]
 「この料理うめー! あれ、大空どこ行っタ!?」


[永瀬 里沙]
 「散歩しに行くって言ってたわよ」



 私は施設の外に出てきて気分転換にちょっとした散歩をしていた。



[朝蔵 大空]
 「綺麗……」



 ここの湖、夜は月明かりと相まって神秘的で癒されるなぁ。



[女子A]
 「ひとり?」


[朝蔵 大空]
 「え?」



 ぞろぞろと派手目な女の子達が私の前に集まっている。


 前にもこんなことがあったような、怖い……。



[朝蔵 大空]
 「な、なんですか……?」


[女子A]
 「死ね!」





 ドン!





 それはいきなりのことだった。



[朝蔵 大空]
 「きゃっ……!」





 ドボン!!





 私は押されたことにより足を滑らして、そのまま水中へと落ちてしまった。


 私は上へと這い上がろうと藻掻く。



[朝蔵 大空]
 「……!?」



 何? 急に体が重く……。



[朝蔵 大空]
 「ぁ……」



 冷たい水の中、だけど温かくて、全てを任せたくなるぐらい安心するような……。


 誰かに、優しく抱き締められているような、そんな感覚がした。





 「デンジャラス☆エデン」おわり……。
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