悲恋の大空

第7話「デンジャラス☆エデン」

 合宿2日目の朝、私と里沙ちゃんと芽衣ちゃんとアンジェリカさんの4人でモーニングの食事を取っていた。



[女子生徒A]
 「見て、あそこのテーブルだけ輝いて見えますわ」


[女子生徒B]
 「芽衣様も里沙様もアンジェリカ様もなんて美しいの!」


[女子生徒C]
 「1匹だけ芋が混ざっているようだけど」



 芋って私のことだよね。



[女子生徒A]
 「まあ、聞こえてしまいますわ」


[女子生徒B]
 「おーほっほほ」



 な、なんで私はこんな異世界もののテンプレみたいなことを言われているの……?


 私は気になって食事の手を止めてしまう。



[剣崎 芽衣]
 「大空ちゃんお腹いっぱい?」


[朝蔵 大空]
 「え?」


[杉崎 アンジェリカ]
 「あまり食べられていないようだけど」



 だって私に対する悪口が聞こえてきちゃったんだもん。


 あと昨晩土屋先輩から貰ったお弁当を深夜に食べたせいで単純にあんまお腹空いてないんだよねー。



[永瀬 里沙]
 「いっぱい食えよー! 今日はめっちゃ動かないといけないからな〜!」



 里沙ちゃんは口に食べ物が入ったままモゴモゴと喋る。



[杉崎 アンジェリカ]
 「貴女は食べ過ぎなのでは?」


[永瀬 里沙]
 「足りん足りん」


[剣崎 芽衣]
 「あははっ!」



 わぁ、こうやって女の子同士で複数になってご飯食べるのって、私初めてかも、楽しい。


 4月の時は想像もしてなかった、1年生の頃は本当に里沙ちゃんしかお友達が居なかったから……。


 私、今かなり幸せかも?


 ……。



[狂沢 蛯斗]
 「申し訳ありませんでした」


[朝蔵 大空]
 「狂沢くん何してるの!?」



 朝ご飯の後スタンプラリーチームと合流すると、狂沢くんが土下座で待機していた。

 

[狂沢 蛯斗]
 「花澤先輩! おはようございます!」


[花澤 岬]
 「おう、おはよう」



 切り替え早っ。



[朝蔵 大空]
 「おはようございます」


[花澤 岬]
 「おはよう」



 花澤先輩、最初の頃は凄く怖かったけど、優しい人だと分かってからはそんなに緊張せずに話せてる気がするなー。



[古道 大悟]
 「おはよー!」



 古道先輩の元気で大きな声が聞こえてきた。


 この人は花澤先輩と仲の良いお友達ってことは分かるけど、まだふたりでちゃんと話したこと無いなぁ。



[巣桜 司]
 「おはようございまーす……」



 司くん眠そう、昨日はあんまり眠れなかったのかな?



[朝蔵 大空]
 「司くん寝不足?」


[巣桜 司]
 「う、うん……」


[狂沢 蛯斗]
 「昨晩は男子の皆んなで枕投げ大会を開いたんです」



 当たり前のように何やってんの。



[二階堂先生]
 「おーし用紙は各班配れたかな?」



 これから始まるスタンプラリーは、スタンプが置いてあるスポットを見つけて、どのチームが1番早く7つのスタンプを集められるかと言う形式だ。



[二階堂先生]
 「ちょっと待て、今『おーし』と『用紙』で韻踏んでなかったか? がーはっはっは!! ラッパーに転職しようかな!」



 つまんな……。



[二階堂先生]
 「お前ら! 楽しむのは良いが必要以上に暴れんなよー! 器物破損罪になるからなー!」



 各班、シークレットの豪華賞品の為に散らばって行く。



[花澤 岬]
 「はぐれないように」


[狂沢 蛯斗]
 「はい!」


[巣桜 司]
 「うわーん、狂沢くん待ってー」



 さぁ私も頑張って着いて行かなきゃ……。


 私達はまず始めに、公園のような場所に辿り着いた。



[古道 大悟]
 「遊具の近くを探して行こーよ!」



 たくさんある遊具の中から探してみる。



[朝蔵 大空]
 「トイレ行きたくなっちゃった」



 公園付近のスタンプを探してみたけど意外と見つからない。



[朝蔵 大空]
 「あ……」


 
 トイレを済ませて手を洗っていると、化粧スペースにスタンプが置いてあるのが見えた。



[朝蔵 大空]
 「あ、あのーすみません、スタンプありました」


[花澤 岬]
 「見つかった?」


[朝蔵 大空]
 「用紙貸して下さい、私押してきます……」



 私は再び女子トイレに入り、用紙にスタンプをポンと押す。



[古道 大悟]
 「え、女子トイレにあったの?」


[巣桜 司]
 「女子いないグループは詰み……」



 次に私達は、湖がある場所に移動してきた。



[狂沢 蛯斗]
 「見つからないですね」


[巣桜 司]
 「無さそう……ですね」



 

 ぶくぶくぶく……。





[朝蔵 大空]
 「!?」


[永瀬 里沙]
 「ぷはぁっ!」


[里沙の先輩]
 「ナイスゥー、永瀬!!」



 湖から里沙ちゃんが出てきた!



[永瀬 里沙]
 「ありましたよ! スタンプ!」


[里沙の先輩]
 「これで5つ目だな」



 5つ目ってスタンプもう5個も集まったの?


 早っ! て言うか、水の中にあるとかこのスタンプラリー難易度高すぎない?



[永瀬 里沙]
 「あ、大空じゃん。 次いでに押してあげるよ」


[朝蔵 大空]
 「あ、ありがとう……」



 私は里沙ちゃんにスタンプを押してもらう。



[永瀬 里沙]
 「んー、ぽいっ!」





 ぽちゃん。




 里沙がスタンプを湖の中に投げ捨てた。


 スタンプは再び水の底に消えて行った……。



[朝蔵 大空]
 「待って……」



 このスタンプラリー、おかしくない?



[狂沢 蛯斗]
 「むー、永瀬さんとこのグループはもう5つも集まったんですか! 大空さん! ボク達も負けてられませんよ!!」



 私は疑問を残したままグループの仲間と共に次のエリアを目指した。



[巣桜 司]
 「くきゃあ! うさぎさん可愛いです!」


[朝蔵 大空]
 「か、可愛い……」



 私達は動物ふれあい広場と言うエリアにやって来た。



[狂沢 蛯斗]
 「茶色いコロコロしたものがそこら中に転がっていますね! 健康な証拠です」



 最悪!



[嫉束 界魔]
 『ひゃっほーい!』


[朝蔵 大空]
 「……?」



 あっちのほうで何かはしゃいだ声が聞こえてきた、嫉束くん……?



[笹妬 吉鬼]
 「おい危ない危ない」



 なんと、白馬に乗った嫉束くんがこちらほうに向かって来る!



[古道 大悟]
 「わーん、こわーい! 岬助けてー」


[朝蔵 大空]
 「……」



 私は向かって来る馬を目の前に足がすくんで動けないでいた。


 また昨日みたいに吹っ飛ばされる……。



[朝蔵 大空]
 「きゃっ」



 その時、体が何かに引き寄せられた。



[花澤 岬]
 「馬鹿、お前なんで避けないんだよ」


[朝蔵 大空]
 「あ、すみません……」



 あ、危なかった、花澤先輩のおかげでぶつからずに済んだ……。



[朝蔵 大空]
 「ありがとうございます、花澤先輩」


[花澤 岬]
 「まったく、お前もう俺の隣にずっと居たら!」


[古道 大悟]
 「は?」


[朝蔵 大空]
 「えっ!?///」



 それってどう言う……。



[古道 大悟]
 「あーもうマジでなんなわけ!!」


[朝蔵 大空]
 「え……」



 古道先輩? 今、私に言った?



[狂沢 蛯斗]
 「向こう行っちゃいましたけど」



 古道先輩、ひとりでどこに走って行ってしまった。



[花澤 岬]
 「ほっとけ」


[朝蔵 大空]
 「で、でも」


[花澤 岬]
 「いつもの事だから」



 花澤先輩冷たいけど、これっていつもの事なの?


 古道先輩、私のこと睨んでたよね?


 理由は分からないけど、私が古道先輩を怒らせたのか。



[巣桜 司]
 「はわわ……」


[朝蔵 大空]
 「私、呼び戻しに行って来ます! 司くんも着いて来て!」


[巣桜 司]
 「え、ぼくも?」


[花澤 岬]
 「おい、勝手なこと……」


[狂沢 蛯斗]
 「ひゃー! 花澤先輩とふたりきりだ!」


[花澤 岬]
 「ええ……」



 今だ! 狂沢くんが花澤先輩の注意を逸らしている内に!!



[巣桜 司]
 「たーすーけーて〜!!」



 私は司くんの首根っこを掴んで古道先輩が走って行ったほうに駆け出した。



[朝蔵 大空]
 「古道先輩ー!」


[巣桜 司]
 「い、居ませんね……」



 古道先輩、どこ行っちゃったんだろ?


 連絡先知らないからメールすることも出来ないし……。



[巣桜 司]
 「ねぇもう戻りましょーよー」


[朝蔵 大空]
 「う、うんそうだね」



 そう、(かかと)を返そうとした時だった。



[古道 大悟]
 「なんで……」


[朝蔵 大空]
 「あ! 古道先輩!」



 木の影から古道先輩が出てきた。


 私は捕まえようと、古道先輩に向かって勢い良く走り出す。



[古道 大悟]
 「ひっ、来ないで……!」


[朝蔵 大空]
 「えっ?」



 古道先輩、酷く怯えている。


 でも、誰に対して?



[巣桜 司]
 「あの、大丈夫ですか?」


[古道 大悟]
 「あ、うん」



 あれ、古道先輩……司くんが声を掛けたら少しだけ安心したような顔になった?



[古道 大悟]
 「ご、ごめん……オレ、戻るわ、はは」


[朝蔵 大空]
 「……?」



 私と司くんは、古道先輩が後ろに着いて来ているか確認しながら元のエリアへと戻って来た。



[朝蔵 大空]
 「先輩、体調大丈夫ですか?」


[古道 大悟]
 「えと……」



 おかしいな、いつもの古道先輩じゃないみたい。


 もっとフレンドリーな印象があったけど、私嫌われてるのかな……。



[狂沢 蛯斗]
 「止まりなさーい!!」



 狂沢くんがまた大声出してる、どうしたんだろ?



[嫉束 界魔]
 「吉鬼ー! これどう止まるの?」


[笹妬 吉鬼]
 「知らんがな」



 嫉束くんまだ馬に乗って爆走してる!


 狂沢くんがその後ろを着いてくように走ってるけど……。



[朝蔵 大空]
 「馬に着いて行ける狂沢くんは何?」


[巣桜 司]
 「見て下さい! 嫉束くんの髪の毛!」



 え、嫉束くんの髪の毛?



[巣桜 司]
 「あれ、スタンプじゃないですか?」



 見てみると、嫉束くんの白い毛にスタンプが引っ掛かっている。



[朝蔵 大空]
 「ななな……」


[古道 大悟]
 「み、岬どこ」


[嫉束 界魔]
 「死にたくなければ皆んな避けてねー!」



 大変だ! 今度は古道先輩に向かって馬が突っ込んでく!


 このままじゃ古道先輩が死ぬ!!



[加藤 右宏]
 「大空! 好感度アップのチャンスだッ」


[朝蔵 大空]
 「うぇ、ミギヒロ!?」


[卯月 神]
 「僕の力を分けてあげましょう」


[朝蔵 大空]
 「卯月くんまで!」



 な、なんか空中から見てくる人達がいるんですけど。


 次の瞬間、私の体が熱くなり、そしてなんか(みなぎ)ってきた!



[朝蔵 大空]
 「な、なんか今ならなんでもやれそうな気がしてきた! ……とおっ!!」



 嫉束くんが乗っている馬に私も飛び乗った。



[朝蔵 大空]
 「嫉束くんごめん!」



 私は嫉束くんの髪に引っ掛かっていたスタンプを無理やり引っこ抜いた。



[嫉束 界魔]
 「いててててて!!」



 嫉束くんの後頭部の髪が数本ブチブチと抜ける。


 同時に馬は進行方向を変え、(にわとり)小屋へと突っ込んで行った。





 ガッシャーン!




[嫉束 界魔]
 「クソ痛かったんですけど! え、ここどこ?」


[ニワトリ]
 「コケー! バカー! アホー!」


[嫉束 界魔]
 「シャベッタぁぁぁ!!」



 やった、これでスタンプ3つ目……。



[朝蔵 大空]
 「疲れた」


[古道 大悟]
 「……」



 これだけ苦労してまだスタンプ3つ目とか信じられない。



[嫉束 界魔]
 「ねぇねぇ! ニワトリってインコと一緒で喋れたんだね!」


[巣桜 司]
 「ニワトリさんふわふわ……可愛い♡」



 運良くスタンプゲット出来たけど、古道先輩は?



[花澤 岬]
 「大丈夫か?」


[古道 大悟]
 「う、うん!」



 よかった! 無事だったみたい。





 パチパチパチ!





 周囲から拍手の音が聞こえてきた。





 つづく……。
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