私を導く魔法薬

彼の記憶を探して

 まずダリアは得意の占いで、彼に何が起きたのかを知ろうとした。
 ところが何度試そうと、いつもはハッキリとしたことがわかる得意な占いで曖昧な結果ばかりが出てくる。

「…っ、まただわ…!これだけ占ってもだめなんて…!!」

 こうなれば自ら調べに行くしかない。
 気が進まないなど彼女は言っていられないと意気込み、急いでホウキを取り出す。

 ダリアは男をそのまま湖の辺りに待たせると、国のあちこちで彼の噂を聞いた者や見た者、そのほか吹雪のあった場所がないかを調べて回った。

 とはいえ彼女は相手慣れをしていない、特別視されている半魔族。おまけに付き合いは苦手ときている。
 尋ねまわる、とは程遠く、半ば相手を問い詰めるようにして聞き出していった。

 その結果分かったことは、皆が眠る真昼頃、国のあちらこちらで冷気をまとった彼の姿は目撃された。そして周辺が吹雪や氷に見舞われたということだけ。


 湖に帰ったダリアはそのことを男に報告した。

「…全く役に立たない情報ばかり。真昼の寝る時間だからとみんな何とかしようとしないで避けていたらしいし、あんたには森に着くまでの記憶はないし…え??」

 そう、どこからどう来たか覚えておらず、森に来てからの記憶しかないという男。
 ということは少なくとも、森に入る直前に、自我を取り戻す『何か』があったかもしれない。

「そうよ!森に入る直前に何かが起きたんじゃないのか、よ!」

 それを聞いた男は頭に手を当てて考え込んでいたが、やはり思い出せないらしく首を横に振った。

「森の入口に行くわよ!」

 ダリアは意気込んでそう叫ぶ。

「…本当にお前は世話焼きだな。感謝する」

 男はニコリと少し微笑んだ。
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