私を導く魔法薬
 彼女は唖然とした。

「…あんた、私を探すためだけに真昼の街であんな騒ぎを…!それに彼は人形なんかじゃ無い!!彼から感じる魔力なんて微々たるものだった。あんな微量な魔力で、これだけ動くことなんて出来るわけないわ!」

「待て、落ち着くんだ…!」

 なおも警戒する彼に制されながら、彼女はどこにいるとも分からない相手に言い返す。

『愛らしいダリア。それでこそ我に相応しい。氷の鎖に繋がれ我が妃になるお前の姿を、早く見てみたいものだ』

 平然とした様子の相手の声。
 そして、

「!?…くっ…!」

 彼の小さくうめく声が聞こえすぐに振り返ると、自分の少し後ろで彼は銀色の鎖に絡め取られていた。

「あっ!」

 急ぎ彼に手を伸ばそうとした次の瞬間、突然白い衣を身にまとった者が彼女の目の前に現れる。

 驚く間も姿をよく見る間も無く、相手は彼女を片手で抱き寄せ、そのまま口付けた。

「っ!!?や…嫌あああ!!」

 突然のことを何とか理解した彼女は離れた瞬間に叫び、とっさに魔法を目の前の者に向かって放つが、相手は一歩後ずさっただけ。

「!?」

『混血魔族の娘…王家の血を引く一人…相応しい…!』

 彼女の魔力に全く動じなかった相手は大男だった。

 白い衣をなびかせ、銀色の髪に銀の髭、その頭に光る角。
 ニヤリと口を歪めるが、目は氷のように冷たい視線をこちらに向けている。

『どうだ、体が動かなくなってきただろう?じきに我の命令通りにしか動かなくなる』

「っ、ふざけないでよ!!」

 相手の言葉にそう返した彼女だったが、全く体に違和感は感じない。
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