私を導く魔法薬
「?」

 素直に自分の体を見渡してから手を結んで開き、足でステップを踏むが全く問題なく、例の彼と大男の前で軽やかに廻ってみせた。

「…なんとも無いわ」

 そう返事をし、何とも無さそうなダリアの様子を見た彼は安心したらしくほっと息をつく。
 大男の方は訳も分からず頭を抱えた。

『なぜだ!?強力な魔力などダリアにあるはずがないのに…!!』

「知らないわよ!!お前の氷の力が弱いんじゃないの!?…そんなことより、よくもこの私にキスを…!!…初めてだったのに…!っ、彼を離しなさいよっ!!」

 彼女は先ほどの気迫で叫んだが、いくつかのことに思い当たる。

「…お前は氷の魔人ね!?あのねえ、剣士の彼が吹雪をまとって自分のそばに来ているのに、あの寒さを生身でいられるはずがないでしょう!?私特製の、熱を高める薬を飲んだのよ、だから効かないの!…私を探し回るために街や森を雪だらけにするなんて!!」

 彼女は言い放つと、相手に向かって手をかざす。

「早く彼の鎖を解きなさい…!!さもないと炎の精を呼び寄せるわ、それくらいはできるの!!」

 彼女が言うと大男は悔しげに顔を歪め、自分の周りに吹雪を巻き起こし始めた。

『こうなったらお前を氷漬けの人形にしてやる!その男も氷の番兵に逆戻りだ!!』

「まだ分からないの!?」

 ダリアはため息を付き、魔力を集中させた。

「…炎の精よ!」

 彼女の詠唱により小さな火が現れ、その中から真っ赤な炎の服をまとった、妖精のような姿の、手のひらほどの大きさの炎の精が現れる。
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