私を導く魔法薬

私の先祖

 現れた炎の精のあまりの小さな姿に魔人が呆気に取られる中、炎の精は突然澄んだ通る声で歌を歌いだした。

……

 ダリアは争い嫌いなの

 あなたに教えてあげましょうね

 昔むかしの魔王様

 仲間想いの優しい方よ

 戦い止めた人間の娘

 ふたり仲良く添い遂げて

 魔族のこの国が出来たわ

 ダリアの血筋はその血筋

 だから相手を傷付けたくない

 魔法を使わないのもそのためよ

 戦いは止めて歌いましょ…

……

「ちょ、余計なことはいいのよっ…!」

 炎の精の歌を聞いたダリアは慌てて歌をやめさせた。

『昔の魔王と娘のせいで魔力の薄い、気の毒な成り損ないだとしてもお前は美しいぞ、ダリア。ひと目見たときからその気品高い姿に、すぐにでも手に入れたいと思っていたからな!』

 しれっとそう打ち明ける魔人の言葉に、ダリアは怒りがこみ上げる。

「なんですって!?あんたは結局、私の王家の血筋しか見てないんじゃないの!!それに成り損ないだなんて、失礼にも程がある!私のご先祖を侮辱すると許さないわ!!」

 彼女は魔人に詰め寄る。

「謝りなさいよ!!私だけじゃないわ、私のご先祖にもよ!子孫の私の魔力が弱くなろうと、身分も種族もなく好きあって一緒になった私のご先祖ふたりに、一体何の罪があるっていうの!?」

 実際、魔力の弱い自分を恥じてしまったことはあったが、今なら一緒になったふたりの気持ちがなんだか分かる気が彼女はした。

 彼女はこちらを心配そうに見つめる彼をチラリと見やり、また魔人に向かって続ける。

「そんな無礼な考えしか持てないお前に、言われたくはない!!」

 聞いた魔人は笑い、まるで彼女を哀れむようにこう返した。

『そのふたりのせいでそのような呑気な考えしか持てないのだ。あんな非力な人族の、しかも人間の娘の血など引くから…』
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