私を導く魔法薬
「…ダリア。我の考えでは、即刻その男を城に連行ののち、我が魔力で催眠をと考えていたのだ。我の魔力でならその男の記憶は戻るだろう。しかし、お前が必ずということならば…」

「…!!」

 願ってもない魔王の提案に、彼女の心は揺れた。
 魔王の魔力を持ってすれば、彼の記憶を戻すことなど容易いはず。

 しかし自分は彼のためにと奔走し、必ず彼の記憶は戻ると信じてここまでやってきたのではなかっただろうか?

 ダリアは采配を待ち静かに佇む彼を振り返る。
 しかし、

「その男は未だ我の監視下にある。ここまでやってきたお前に決定権を授けよう。ダリア、どうだ?」

 魔王はそう彼女に問う。

 魔王は当然、自分が今まで何をしていたのかを知っているのだろう。
 そうでなければ彼が吹雪を起こし、国で混乱を起こしている時点で連行は免れなかったはず。
 彼が今ごろ自分のそばに無事で居られているはずはない。

 自分に、彼の記憶をすぐに戻すことができるかが掛かっている…

 しかし彼女は、自分の能力に限界を感じていた。
 魔王にああは進言したものの、あれだけのことをしても自分では彼の記憶を引き出すことはまるで出来ていない。

 呆然と立ち尽くし、黙り込む彼女。
 それを見た魔王はすぐに察したらしい。

「…ダリアの中にある本当の自信を奪ったのは、魔力の差や血筋などで差別を受けていたそのせいか…?仕方がない…」

 魔王は静かに彼女の元へ寄り、その彼女よりも倍ほどもある背丈で彼女を見下ろす。

 そして素早い動作で彼女の腰を突然抱いた。

「!!」
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