私を導く魔法薬
 ダリアはすぐに戸棚から薬品を取り出し呆気にとられている子鬼の腕に素早く水を掛け、消毒薬を塗り、薬を塗って処置をした。

「っ…何したんだよ!?」

 呆けていた子鬼は気付き、ダリアの顔と処置された自分の腕を何度も見比べながら言う。

「あんた、傷を治さなくてどうするのよ。私は薬師でもあるの」

「…あ、ありがとう…。でもっ、おカネなんかないぞ!うちは大家族だし下っぱ兵士の家だからな!」

 そんな子鬼の言葉に、またしても『混血魔族の作るものは高価』という流説を思い出させられた。

 自分にそんなつもりはない。
 ただ、自分に出来ることをしてやりたいと思っただけ。

「…あんたに、ちょっと込み入ったことで聞きたいことがあるだけよ…。料金なんか、これくらいでいらないわ…」

 思わず声が震え、いつもの強がりが落ち込む気持ちとともに出てきてしまう。

「本当…?本当におカネ取ったり、しない…?」

 子鬼は目を丸くしたままダリアに尋ねる。
 すると例の彼はゆっくりと前に進み出て言った。

「彼女、ダリアはなかなか親切な魔女だ。ありがたいと思うなら、俺たちに協力してはくれないか?」

 子鬼は彼に気付き、目を大きく瞬く。

「わあ、おっちゃんはダリアより“まりょく”がないみたいだ!ニンゲンなの?」
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