私を導く魔法薬
 寒い。

 そろそろ夕暮れ時で、この国の者たちも起き始める頃。
 いくら魔族の住む国とはいえ、何もせず鳥たちの歌うような暖かい気候から、いきなり雪の降るような気候になるはずはない。

 ダリアは目覚めてすぐに暖かくした室内の窓から外を覗いた。

 いつもは薄暗い、濃い緑の木々や草に囲まれた彼女の住むこの森。

 しかしこの国の者たちの眠る、明るい日差しを浴びていたはずの昼を越したとたん一変。
 霜が降りて葉が凍り、濃い緑の草の上には薄っすらと雪化粧まで出来ていた。

「おかしいわ…明け方に帰ったときにはこんな風になっていなかったのに…何があったの…!?」

 ダリアは漆黒のワンピースの上にガウンを着込み、お気に入りのホウキを携えて外に出ていった。
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