私を導く魔法薬
「元気で、頑張るのよ…」

 ダリアは名残惜しく思いながら、子鬼にそう別れを告げる。

「…せっかく……」

子鬼は下を向いたまま震える声で言った。

「…せっかくダリアと仲良くなれると思ったのに…おいらが、キライになったのかよう…」

 それを聞いた彼女の胸はなぜか少し締め付けられるような気がした。

「そんなわけ……」

 子鬼が自分のことをそんなふうに思っていたとは。
 自分がいなくて寂しいと、今まで誰にも言われたことなどない。しかしこの子鬼は自分に向けてそう言ってくれるのだろうか?

 ダリアはなんと言ったらいいか分からず、言葉を途切れさせた。

「…行くから…」

下を向いたままの子鬼が言う。

「おいら、ダリアのことさがしに行く…!『おんがえし』するんだ!だから、ついたら教えてよ!」

「…チビのあんたに、来られるかしら…?」

 少々いじわるそうにしながら、彼女は子鬼にそう尋ねた。すると子鬼は自慢げに返す。

「行ける…!!ダリアが呼んでくれたコイツが、おいらのそばにいてくれるって言ったから!」

 よく見ると、昨日ダリアが呼び出した草木の精が子鬼の肩に楽しげに寄り添っている。

 いつの間に仲良くなったのか、人懐っこい子鬼はたった一日で草木の精と多少の意思疎通まで出来るようになったらしい。

 子鬼の真っ直ぐに彼女を見て答えるその姿は去っていったあの真っ直ぐな彼を思い出させ、ダリアは子鬼の言葉に胸が温かくなった。

「…あんたのおかげで彼は記憶が戻ったのよ、礼を言うわ。本当にありがとう、ね!場所が決まったら教える!だから、また…!!」

 胸がいっぱいの笑顔のダリアと子鬼は笑い合う。

「やくそく、だからなダリア!おいらはそれまでここを守るから!!」
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