【コミカライズ配信中】アデル~顔も名前も捨てた。すべては、私を破滅させた妹聖女を追い詰め、幸せをつかむため~
 「シリィ……」

 かすれた自分の呟きで、私は目を覚ました。
 
 涙を拭い起きあがって、ベッドの上で膝を抱えて考え込む。

「シリウス殿下はもしかして、シリィ、なの?」

 たしかに、初めて会った時からどこか懐かしさを覚えていた。

「でも幼少期のシリウス殿下は離宮に幽閉されていて、そのあとすぐに王宮に入った。11、12歳のときは、まだ辺境の離宮にいたはず……」

 シリウス殿下とシリィ。
 穏やかで知的な美貌の貴公子と、目つきの悪いぶっきらぼうな少年。
 
 似ても似つかぬ二人が同一人物だなんて、ありえない。
 
 ……と、頭では分かっているのに、おぼろげな記憶を辿ればたどるほど、シリウス殿下とシリィの面影が重なる。

 不器用な優しさだったり、無口で物静かなところだったり、共通点を挙げればきりがない。

 
 シリウス殿下がシリィなのか、今はまだ分からない。
 
 でも私は、彼を助けたい。
 
「殿下がミーティアの幸せなシナリオの犠牲になって死ぬなんて、そんな悲しい未来は見たくない」
 
 シナリオを変えるべく、私は動き出した――。
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