【コミカライズ配信中】アデル~顔も名前も捨てた。すべては、私を破滅させた妹聖女を追い詰め、幸せをつかむため~
 答えが出ないまま、お茶会は終了となった。

 会場を出ると、窓の外はもうすっかり夜。強風と激しい雨が降りそそぎ、時折、雷鳴が轟く。
 

(『前』の私が死んだ日も、確かこんな荒れた天気だったわね)
 
 
 死ぬ直前の、あの恐ろしい光景を思い出してしまう。

 
「お嬢様、顔色がすぐれませんが、大丈夫ですか?」

 ソニアが私の顔をのぞき込み、背中にそっと手を添える。
 
「大丈夫よ。でもこの天気だと、すぐ帰るのは無理そうね」
 
「ええ、そうですね」

「待っている間、行きたいところがあるの」

「はい、どこへでもお供致します」

 私は聖女離宮から続く回廊をわたり、敷地内にある騎士団本部の詰め所へ向かった。

 彼にかける言葉は、まだ思いつかない。無駄足になるかもしれない。

 それでも、自分から動かなきゃ――。

 
 運命(シナリオ)は変えられない。

 

 
 視線の先にシリウスの姿を見つけた。けれど、先客がいたようだ。

 
「シリウス殿下、お待ちになって下さいませ!」

「わたくしたち、殿下に少々、お話したいことがあるのです」

 彼に駆け寄る令嬢たちの姿が見えて、私は立ち止まった。
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